SoundtoysのSie-Q解説&レビュー

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SoundtoysからSie-Qという新しいイコライザーが発売されました。同社では初のEQプラグイン、一体どんなものでしょうか?解説と音源レビューをします!


Sie-Qとは・・・

 

このSie-Qのモデリング元はシーメンス社(Siemens)のW295bというヴィンテージ・イコライザーです。

siemens_w295b

via

シーメンスはドイツ・ミュンヘンに本拠を置く老舗で、音響機器から鉄道関連、風力発電なども手掛ける巨大企業です。ちなみに日本では大正時代に、当時の山本内閣が総辞職した一大スキャンダルのシーメンス事件というのがありましたが、そのシーメンス社です。それで名前を知っている人も多いでしょう(笑)

さて、そのシーメンスが60年代に開発したのがSie-Qのモデリング元であるW295bというイコラーザーです。これはSitralという自社製コンソールに組み込んで使うEQモジュールとして、元は放送局用の機材だったのですが、音質の良さからすぐに音楽制作用に使われ始めました。今日でもハイエンドなヴィンテージ機材として愛好されていますが、オリジナル・ユニットの希少性から市場にはあまり出回らないようです。つまり、貴重かつめっちゃいい機材ということなのです!

 

W295bはディスクリート回路のソッリド・ステートEQなので、チューブタイプのEQに比べるとマイルドでクリーンな音が魅力と言われています。残念ながら筆者は実機に触れたことがないので使用感は書けませんが、ウェブのユーザーレビューを見る限り評判はとても高い様子。その実力、Soundtoysのプラグイン版ではどのように再現しているのでしょうか?さっそく使い方を見ていきましょう。

 

使い方

 

sie-q-original soundtoys

各EQバンド

 

Sie-Qは見た目通りとてもシンプルな3バンドのパラメトリックEQです。ローとハイは固定、ミッドのみ6つの周波数帯域の中から選ぶことができます。

 

ローバンド

  • ブーストはゆるやかなベル・タイプのEQカーブです。ピークは20〜30Hzのかなり低いところになります(グラフはPDFマニュアルを参照)。
  • カットシェルビング・タイプのEQカーブです。

ミッドバンド

  • 実機では「praezenz」(=プレゼンス)という名前が付いていますが、その名の示す通り楽器のやボーカルのミッド・レンジの輝かしさや存在感を調整するのに適しています。
  • EQカーブはAPIなどと同じくプロポーショナルQになっており、ブースト/カットする量に応じてEQカーブの形が変わります。少量のdBでは薄く広いお皿型、大量のdBでは盛り上がったお椀型のカーブになります。

ハイバンド

  • ブーストはゆるやかなベル・タイプのEQカーブです。ピークは10kHz以上のかなり高いところになります。
  • カットローパス・タイプのEQカーブです。

 

Driveノブ

 

このDriveノブはSoundtoysのプラグイン版オリジナルで、実機にはありません。これによりEQ回路によって生じるサチュレーションの量をコントロールできる便利なノブです。-15dBから+15dBの範囲で調整でき、マイルドなサチュレーションから過激な歪みまで掛けることができます。

プラス方向に回したときのみ、ゲイン補正機能がはたらき自動で音量が下がります。例えば、Driveを+10dBにすると歪みは増えますが、音量が10dB分増えるわけではありません。補正がかかるので増える分はもっと少なくなります。多少音量は上がりますが、一気に10dB上がったりはしません。

一方、マイナス方向に回しても補正はかかりません。-10dBにすればそのまま10dB分音量が下がります。

 

小さなバグあり

 

2016年10月11日現在のSie-Q(v.5.1.0)には、低音部に少しおかしな挙動があります。Sie-Qを挿すと0Hzに謎のノイズが出続けてしまいます。

このDCオフセットにも似たノイズは通常それほど気にする必要はないと思いますが、たくさん重なると問題になりそうです。

 

sie-q-0hz-noise soundtoys span

 

 

気になる方はSie-Qの後段やマスター・アウトプットにハイパス・フィルターを置いてカットすると良いでしょう。ちなみに、このバグは次のアップデートで改善されるというアナウンスがありました(このフォーラムを参照)。

追記:ver.5.1.1で改善され、上記のバグは直りました。

 

音をチェック!

 

さて、ここで実際にSie-Qを使ったシンプルなジングルを作ってみました。Sie-Qなし(before)とあり(after)の2mix音源です。

Sie-Q Before

 

Sie-Q After

 

このジングルではドラムの各パーツ(スネア、キック、ハイハット、タム、シンバル)、左右のギター、エレピ、ボーカルフック、ミックスバスそれぞれにSie-Qを挿しました。左ギターには2つ使ったので合計11個ですがCPUの負荷は全然たいしたことはありません。軽いのは嬉しいですね。

Sie-Qの効果を際立たせるため、それ以外のEQやコンプは何も掛けない状態の音源ですが、Sie-Qを挿したあとはある程度音にメリハリが出たのではないでしょうか?ポイントをかいつまんでご紹介すると・・・

ドラムでは各パーツに挿したSie-Qでブースト/カットしつつ、すべてDriveを+1dBしてみました。適度なサチュレーションが掛かり全体にパンチ感が出るのでオススメです。

sie-q-drive soundtoys ドラム

 

ギターでは左ギターの中低音がモコモコしていたのでローを-10dBしてカットしました。このようなローカットも自然な感じでかなり使えるEQだと思います。

エレピ音を明るくするために1.5kHzを+2.5、ハイを+4dBしています。

ベースだけはSie-Qを使わず、他のEQとコンプをかけました。すでにキックにSie-Qを使ってローをブーストしているので、ベースにもSie-Qを使うと同帯域をブーストすることになってしまいます。それは避けたかったので今回は見送りました。

 

さいごに

 

SoundtoysのプラグインではディレイのEchoboyやサチュレーションのDecapitatorがとりわけ高評価ですが、同社初のEQプラグインもまた非常に高品質で素晴らしいものになっていると思います。さらに、アメリカン/ブリティッシュ系のアナログ・モデリング・プラグインは市場に多く出回っているものの、Siemensのようなジャーマン系はまだまだ数が少ないため希少価値も高いと言えそうです。

2016年10月13日までこのプラグインは無料でゲットできます。それ以降は有料ですが、Soundtoysはしばしばセールをやるので持っていない方はぜひチェックしてみてください。

ちなみに、Soundtoysのシングルプラグインを持っていればバンドルが値引きされるのでお得です。今回無料でゲットできた方は、アカウントでバンドルの値引きも見てみるといいかもしれません。

ではでは!

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